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「深夜特急」の世界に憧れて (回想録 XX年)
マニラで、メーターを起動させないままのタクシーに乗って「知らぬが仏状態」で目的地に向かっていた私は、やがて自分の「失策」に気づかされることになる。
恐らく、このタクシーの運転手にしてみたら、当然、「計画的」にメーターを起動させなかったに違いないし、目的地に着くまでの間、私がこの「起動していないメーター」に気づかないことを、神に祈る気持ちだったことは容易に想像がつく。
今から思えば、この時は、前日からの極度の疲労の上に、乗車する前から巧みな策略で、客の気を逸らせ、最後に法外な料金を請求する手口を持った運転手の罠に、マンマとはまったのだろう。
目的地に着いた私は、一切、数字の点灯していないメーターに気づいたのだが、もう後の祭りだった。
悪い予感というものは、当たるようになっている。
一瞬、運転手と目が合うと、その「強烈な視線」は私の脳を突き刺し、その後心臓の洞房結節に飛び火し、やがて房室結節、プルキンエ繊維へと徐々に広がりを見せ、私の「心拍数」を高めて、胸部をえぐり取られんばかりの不安感の極致に陥れるのだ。
その「心拍数」が最高潮に達した時、運転手が放った一言が、「300USドル」だったのである。


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